GVSを用いた案内ツール(濱川 登夢)

濱川 登夢

私は自動で道案内をしてくれる装置の作成に臨んだ。

自動で案内してくれるというのは、音声で指示をしたり方向を示したりといったものではなく、自動で歩むべき道を歩めるように誘導するということである。

そのために私が用いたのはGVSという技術だ。GVSとは前庭電気刺激のことで、耳の後ろあたりの前庭というヒトの平衡感覚を支配している器官に微弱な電気を流し平衡感覚を操る手法である。これを利用すると、例えば右から左に電気を流すと対象者の身体を左に傾けることができる。より、これとGoogle Mapsの道案内を連携させて身体を道順通りに歩かせるシステムを考案した。

しかし、実際にできたのは身体を右、左と傾けさせるところまでであった。

この装置は定電流部分とリレーを用いた電流のスイッチング部分、そして人体用電極パッドの出力部で構成されている。

定電流部はDCDCコンバータにより昇圧された高電圧部(300Vほど)とオペアンプとMOSFETで構成されている。

5V→300Vに昇圧するDCDCコンバータが見つからなかったので、8~12V→200~300Vの昇圧コンバータと5→8~10V(たぶん)の昇圧コンバータを二つ用いて、Arduinoの5Vをまず10Vに昇圧し、それをさらに300Vに昇圧した。

スイッチング部はリレー二つを用いて、Arduinoからの指令通りに、電流の流す方向を変えている。

そして、その電流をイヤホンジャックと電極パッドで出力している。

実際に使ってみたところ、僅かに傾く感覚を覚えた。また、2mAぐらいから肌にチリチリとした感覚を覚えた。電極と肌の間に少しある空気層との抵抗差によるものと思われる。

また、実験中に感電してしまった。運良く怪我はなかったが、トラウマになった。

この感電でようやく設計段階でのミスに気付いた。いくら安全に設計されていたとしても、私はもう体に電流を流すデバイスを使いたくなくなっていたのである。安全だと自信を持って言えたとしても心理的に拒否感を覚えるものは不適切な設計であるということに設計段階で気づけなかったのは反省点である。

総評・感想

メカトロニクスで紙の上で学んだ電子機器・部品類を実際に手で触れ使い方を学べたことはとても良い経験になった。

しかし、計画通りに進められず、未完成に終わってしまい、反省している。また、面白さ・役立つかばかりを考えて設計していたので、設計上の安全面や使用者の心理的配慮に気が回らなかったのは反省点であり、次回以降に繋げたいと思った。