PBLレポート
37-186194 大場雅史
機械工学専攻修士課程一年
スマートスリーピングマット
目的・要件定義
睡眠は日々の疲労回復や健康維持に必要不可欠であり、近年は睡眠に関する書籍への関心が高まったり、スリープとテクノロジーを融合させた「スリープテック」という言葉が生まれ、睡眠に関する様々なデバイスや電化製品が販売されたりしており、睡眠に対する人々の欲求は高くなっている。
睡眠医学の研究機関の一つに「スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所」があり、当研究所所長である西野精治氏の著書「スタンフォード式最高の睡眠」[1]では睡眠の質の向上について様々なメソッドを研究論文の紹介とともに提示されている。その一つに体温のコントロールがある。質の良い睡眠となるには、睡眠時に深部体温(体の内部の体温)が日中に比べて下がる必要がある。そのためには熱をどこかに放散する必要があるが、それを担うのが手足などの末端の皮膚である。すなわち、睡眠時には手足からの熱放散が欠かせないが、冷え過ぎても毛細血管の血行が悪くなり熱放散の効率が悪くなるため、深部体温に対して手足の皮膚温度がわずかに低いことが理想である。
本演習では上記の研究結果を元にして手足の温度を調節することで睡眠の質を向上させるIoTデバイスを考案、製作した。
製作物の概要
製作物の外観と構成イメージを図1、図2に示す。センシングとして、温度を測るサーミスタと睡眠状態を計測するNokia Sleepを用いた。Nokia Sleepはフランスのウィジングズ社が販売するスリープセンシングパッドであり、ベッドインアウトの検知、レム睡眠ノンレム睡眠など睡眠状態の計測を行うことができる。手足の温度を調節は水を循環させることで実現する。水はペルチェ素子のよって温度が調節され、水が通るチューブを通したマットによって手足と熱を交換する。現状このマットは足に巻き付け、ゴムで固定することで効率的な熱交換ができるようになっている。ユーザーインターフェースには情報を表示するディスプレイと操作用としてスマホにボタンが設置されている。このボタンはボタン⇒ifttt⇒beebotte⇒製作物 のように各種Webサービスを用いている。これらの制御は全てラズベリーパイによって行われる。
制御は基本的にはベットイン時に手足の温度が深部体温の-1.5℃となるように調節し、睡眠開始から十分時間が経過したら徐々に下げるようになっているが、自由に変更ができる。Nokia Sleepの睡眠の質採点機能や各温度のログ、自分の感覚などが自分に合った温度に調節するための指針となるだろう。将来的には大量生産し睡眠時データをクラウドに集め年齢層などから自動的に最適化することも可能になると考えている。
図3に実際に動作させた温度グラフを示す。皮膚温度を深部体温に対して数度低く保つことができていることから、睡眠の質を向上させるという目的は達成されると考えられる。
謝辞
IoTメディアラボラトリーのスタッフやラボ内で出会った様々な方からアイデアを広げていく手法や製作関わる知識や技術を教えて頂き助けて頂きました。また、IoTや電子工作の知見が広がり自分の将来について再考することができました。ありがとうございました。
参考文献
[1]西野精治(2017) 『スタンフォード式 最高の睡眠』 サンマーク出版.