IoT演習とトイレ
清水 崇博
IoTとはInternet of Things(モノのインターネット)の略である。モノがインターネットに繋がるということである。かなりざっくりとした概念である。さらにこのIoT演習における設計製作の要求機能が「ビル・ゲイツを驚かせる」というムチャぶりであった。テーマはザックリしており、要求機能も適当なので最初は何を作っていいのか分からず困惑していた。
IoT演習のコンセプトが決まらないまま数日が過ぎたある日、半蔵門線の中で急に便意を催して青山一丁目のトイレに入るという出来事があった。トイレに入ると、仕事帰りのサラリーマン風の男性が個室の前で順番待ちをしていた。こんなことなら他のトイレを使っておけばよかったと思ったなあ、と思ったその時、ひらめいた。これ、IoTで解決できるのでは?と
実際に作ってみた
IoTトイレの概要を説明する。今回の作品のテーマは「行列の仮想化」である。行列ができてしまうような混雑するトイレを想定し、その行列を仮想化することにより、人が実際に行列に並ばなくていいようにすることが目的である。行列の仮想化は、実は結構いろいろなところで行われている。例えば、銀行の窓口で配られる整理券などがそれにあたる。
行列の仮想化に必要な機能は以下の4つである。①利用者がトイレの順番待ちに参加できる機能、②行列の長さを利用者に知らせる機能、③利用者の順番が来たら知らせる機能、④割り込みを防ぎ機能、である。①~③はwebページ上で、④をトイレにつけるデバイスをwebページ上から操作する形で行うことにした。したがって、今回の演習で作ったのはwebページと、トイレにつけるデバイスの二点である。
webページには上記の①~③の機能を付けた。
デバイスには、フォトインタラプタによる扉の開閉検知機能、焦電式赤外線センサによる人検知機能、サーボによる鍵の機能をつけた。順番の入れ替わりの間(つまりトイレは空)は鍵が閉まり、自分の順番になった人のwebページから鍵を開ける操作ができるようにすることで④を実現した。
作ってみた感想
まず、webをあまり触ったことがなかったので苦労した。特にjavascriptを触ったことがなかったので、webページの制作には非常に時間がかかった。また、ブラウザによって動いたり動かなかったりするのも苦労した。「Safariで動いたのにChromeではうまくいかない」みたいなことが結構多かった。だが、その分、サーバーの構造や通信方法、cookieなどwebの基本的な仕組みを学ぶことができて非常に勉強にはなった。
また、「他の人が使うことを想定してモノを作る」という経験もなかなか他では得難いものであると思う。他人は時に自分には理解できない行動をすることがある。例えば、当初「トイレに入った後鍵を閉めない人」を想定していないと指摘された。もちろん、私はトイレでは必ず鍵を閉めるしこれを当然のことと考えていたが、他人が使うモノを制作するにあたっては、こういった固定観念や先入観を捨てなければならない。これが非常に難しかった。
ちなみに、トイレで鍵を閉めない人には申し訳ないが鍵が自動で閉まる仕組みにした。
最後に一つ残念だったことがある。「行列を仮想化する」という考え方、実はトイレ以外のところでも応用できる。制作中、トイレのことばかり考えていたので視野が狭くなってしまっていたのだ。最後の発表の時、教授に「お前はトイレが好きだから気づかないかもしれないけど、他のところでも使えるぞ」と言われてハッとなった。これからは、常に広い視野を持って学問にはげもうと思う。