スマートリュック
機械工学科3年青田 香菜子
製品デザイン・コンセプト
製品の概要
全体の外観
このトナカイが本体。中に回路が入っている。
リュックに入れてしまえば、街中でも不審に思われない、目立たないデバイス。
水分補給応援
水筒をいれておいて、
水筒を取り出すと、
水分補給をした、ということで
カレンダーに記録される。
ついでにトナカイも「お茶を飲んでえらい!」と喋って褒める。
作業に熱中していて水分補給を忘れていても、指定した時間以上水分補給していないと、
スマホに通知が来る。
トナカイも「そろそろお茶の時間ですよ」と声で教えてくれる。
重いと応援
リュックの荷物が重いときは、トナカイが「荷物重いね、かんばれー!」と応援する。
機能一覧(ここまでの整理)
- いろんなリュックに付替え可能
- しゃべる
- 音声合成LSIとスピーカにより、おしゃべりを実現
- お茶を飲んだらgoogleカレンダーに記録
- お茶を飲んだらほめる
- 水分補給タイミングをスマホ通知と音声でお知らせ
- 外ポケットの水筒の有無を検知
- 荷物が重いと応援
- リュックの荷物の重さを感圧センサによって検知
コンセプト
- リュックに取り付け型の、楽しく励ましてくれるデバイス
- 毎日に疲れた人
- 定期的に水分補給する必要がある人
- 水分を十分とることは美容によい(らしい)
- 健康にもよい(らしい)
- 美容のために水をたくさん飲むことに取り組んでいる人、登山中等水分補給を忘れがちな場面をターゲットとしている製品である。
設計上意識したポイント
- ユーザーを楽しませる製品を目標とした。
- そのため、かわいい音声を用いて通知を送るようにし、親しみをもってもらえるようにした。
- また、googleカレンダーやスマホ通知とも連携させることで、実用性も兼ね備えるようにした。
具体的につくったものの説明(システム概要)
トナカイの中身はこのようになっている。これを取り付けることでお気に入りのリュックをどれでもスマートリュックに変身できる。
小さな透明の箱のなかに回路をまとめ、安全に携帯できるようにした。
箱は100均のようじ入れにケーブルの通る穴を加工した。
回路本体。Arduino UNOに自作シールドをとりつけた。
表側の様子。右上がwifiシールド、右下が音声合成LSI。
裏側の様子。ポリ銅線というものを使用して配線した。
表面にコーティングがされており、はんだごてを当てるとコーティングがとけて導通する。
配線の交差が可能になるので実装が容易。
リュックの肩ひもに取り付ける感圧センサ。
肩があたる部分に取り付けることで荷重を検知する。
写真のように取り付ける。
水筒ポケットの底に入れるボタン。
水筒を入れるとボタンが押されて検知できる。
カバーの中身は工作でつかう普通のボタン。
全体こんな感じで水筒ポケットの底にセット。
主な回路使用部品
- arduino
- メインのマイコンボード
- ESP-WROOM-02(開発ボード)
- wifiモジュールとして使用
- スマホデザリングを通じてwebサービスと連携する
- 比較的ユーザーが多く、参考記事がネット上に多いため安心して使える
- AquesTalk pico LSI 「小型ロボットの声」
- 日本語の音声合成LSI
- 音声記号文字列を送ると音声信号を出力する
- これで生成した音声をスピーカーから再生することで喋る
概念図
ハードの概念図。
10sごとにセンサの状態を検知し、通知を行うという方針でソフトウェアは設計。
回路図
回路図は上の図の通り。
ESP-WROOM-02について、開発ボードを用いることでレベルシフタを自分でつける必要がなくなり、実装デバッグがかなり楽になった。
上の回路図からシールドの実装レイアウトを設計したもの。
開発ボードではレベルシフタの機能が表面実装されているため、自分で外付けするより基板を小さくできた。
外付けセンサのケーブルを一か所からまとめて出せるように、工夫した。
苦労した点
- はじめは、事前に用意した音声ファイルを再生させようとした。しかし、データが大きすぎてarduinoに保存、再生ができなかった。
- そのため、文字列を送ると音声信号を出力するモジュールを使用した。
- これにより、喋る長さの制限がなくなり、より人間に近い、無機質ではない長いメッセージを喋らせることができるようになった。
- wifiモジュールと音声合成LSIそれぞれがarduinoと通信しているため、ハードウェアのシリアル通信ではなく、SoftwareSeriarl通信を使用した。
- SoftwareSeriarlの仕様を理解したり、それにあうライブラリを見つけることにも苦労した。
製作した感想
- 電子回路工作を一から設計して取り組む機会がいままで取れなかったので、純粋に非常に楽しめた。
- arduinoを2つのモジュールと通信させたので、通信の仕様を理解し、バグを一つずつつぶす作業が大変だった。
- 既存技術を使用する際は、要求機能に見合ったものを選定することがもちろん大切である。しかしそれに加えて、使いやすさ、情報の多さを考慮すると、実現への不確実性が減るということを実感した。
演習を通して学んだこと(iotとは、製品開発とは)
メカトロ演習と少しことなる”IoT演習”というものに参加するということで、”IoT”のメリットは結局何なのだろう、ということを大いに考える機会となった。
“IoT”というテーマで製作を行ったが、インターネットにつながっていることのメリットを十分生かす製品デザインをするのが難しかった。
今回製作したものについては、よりよい設計解を探していくとインターネットを使う必然性が弱いかもしれない。
作りたいものが先にあって、それを実現したい場合、最適な設計解を見つけることが大切である。
一方、特定の新技術から何か製品を作ろうとする場合には、その技術のメリットデメリット、以前からある技術との差分をしっかりと理解したうえで、それを踏まえた製品設計をしなくてはならない。
両方の考え方をもってよく検討して設計しなければ魅力ある製品にはならないと思った。
また、近年IoTを謳った製品が多く販売されている。
しかし、目新しさはあるが本当に便利になっているのか、長期的にビジネスとして成立するのかあやしいものもあると思う。
趣味ではなく仕事としてものづくりをする場合にはそのような視点をもつ必要があるということを学んだ。